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床のデザインについて思うこと

2026.03.11

今日は3.11。15年前のあのおぞましい大地震と津波が起きた日です。亡くなられた方や被害にあわれた方々に、深く哀悼の意を表します。

あの日、私は二日酔いで昼寝をしていたのですが、大きな揺れで目を覚まし、即座に庭へ飛び出しました。揺れ続ける建てたばかりの自邸を庭から眺めて思ったのは、「家はこうやって揺れるのか!」ゆさゆさと大きく、30cmほどは横揺れしていたでしょうか。しかし耐震性のおかげで、建物は歪むことなく四角い塊のまま右へ左へ揺れていました。

揺れが収まり建物は無事でしたが、棚の上の重いものが床に散乱して大惨事。ワインボトルや一升瓶を高い所に置いてはいけない、という教訓を得た日でもありました。

話は変わりますが、今日はそんな自邸の床のデザインについて思いを馳せてみました。

理想のフレンチヘリンボーンを求めて

当時、自邸の設計にあたり、メインリビングの床にはヨーロッパでよく見られるフレンチヘリンボーンを採用したいと考えていました。しかし、当時の日本には扱っている建材メーカーがほとんどなく、海外メーカーも探しましたが、輸入のツテもありません。 ヘリンボーンと言っても細かいパーケット状のものはありましたが、私が求めていたのは、突き合わせ部分が45度にカットされ、幅広のダイナミックなサイズ。リサーチ中に巡り合ったデザイナー、ピエト・ブーン(Piet Boon)の自邸の床こそが、まさに理想でした。それからというもの洗練された彼のデザインにのめり込み、私たちにとって目標とするデザインユニットの一つとなりました。

究極の造作と無垢材の個性

結局、理想のフローリングは手に入りそうになかったので、自分で作ることにしました。 幅15cm、厚み1.5cm、長さ182cmの無垢ホワイトオーク材を自ら斜めにカットし、一枚一枚すり合わせて貼り上げました。さらに難易度を上げたのが、コンクリートに埋め込んだ温水パイプで温める蓄熱式床暖房への対応です。コンクリートへの接着剤直貼りという、非常に手間のかかる超難易度の仕事となりました。

15年経った今、床は日焼けしてこんがりとした飴色に変化しました。無垢材ゆえに傷やひび割れ、継ぎ目の隙間も目立ちますが、それこそが無垢の証です。今の主流である印刷技術による床材は反りも割れもしませんが、それでは人間と同じように個性やぬくもりが感じられず、どこか寂しい気がするのです。

現在の鳥瞰写真

適材適所の素材選び

現在手掛けている現場のそうですが、最近では3〜5mmほどの無垢材を合板に貼り合わせた「挽き板(複合フローリング)」を使うことが多いです。最近の技術向上により、非常に質感の良い製品が増え、重宝しています。 それでも、これらは比較的新しい建材。耐久性は未知数です。過去の歴史に学べば、社寺で使われているような無垢の縁甲板が100年以上保っている事実は、何よりも信頼に値すると感じます。

もちろん、木だけが正解ではありません。 水回りには水の影響を受けにくいタイルや石といった硬い素材がおすすめ。ペットと暮らす方にも最適です。冬の冷たさは床暖房との組み合わせで解消できます。 デザインも、オクタゴン&ドット、ダイヤモンド、バスケット、モザイクなど、パターン次第で無限に個性を演出できます。

また、寝室やクローゼット、階段にはカーペットの敷き込みもお勧めしています。ほこりが舞い上がりにくいためアレルギー対策になり、階段では小さなお子様が転んでも安心です。

なぜ「床」に投資すべきなのか

床の選択が重要な理由は、第一に、空間を構成する「床・壁・天井」の中で一番体に触れる面だからです。歩けば足裏を支え、寝転べば体を包みこむ。家にいる間、常に触れ合う場所だからこそ、相性の良い「床」を選びたいと思うのは自然な欲求です。

第二に、「リフォームが最も困難な場所」だからです。 「天井の方が大変では?」と思われるかもしれませんが、熟練の職人なら、家具があっても脚立と足場でしなやかに貼り替えてしまいます。 それに比べ、床は厄介です。全ての家具を運び出し、既存の床が綺麗に剥がれる保証もないまま解体しなければなりません。床暖房パネルや水道などの配管を傷つけるリスクも伴います。 床の張り替えは、経験と技術、そして「覚悟と強い意志!?」が必要な、難易度の高い工事なのです。

だからこそ、床の選定はじっくり慎重に、そして時には大胆に投資してほしい。 「リフォーム難易度:壁 < 天井 < 床」。 だからこそ、お金をかける優先順位も「壁 < 天井 < 床」という公式が成り立つのです。